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【みんな生きている】シェーンバッハ・サボー(17)/ミニシンポジウム

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(令和元年9月16日)

櫻井よしこ(司会)

ミニシンポジウムを行います。

横田拓也さん、飯塚耕一郎さん、そして西岡さん、私の4人で、どうしたら拉致被害者を助けることができるのか、何が必要なのかということ等を具体的に話していきたいと思います。

先ほどの国会議員の皆様方のお話の中で、色々なアイデアが出ました。例えば立憲民主の村上さんには私は厳しいことを申しあげましたが、北朝鮮に事実上拘束されていた第18富士山丸の船長さんと機関長さんを取り戻すのに、自由を奪われていた理不尽な状況で拘束されていたことについて、「わが国の国民を長い間お世話してくださってありがとうございました」と言うこと自体、そういうことを言わなければならない国であってはならないのであり、私たちはこれから拉致被害者を取り戻す時に、全く別のアプローチで行わなければならないという意味で問題提起をしたつもりです。言い過ぎた所があったらお許しをいただきたいと思いますが、私の気持ちはそういうことでした。

さて、横田さん、飯塚さん、拉致被害者救出の現状ですが、何も変わっていないじゃないか、進んでいないじゃないかという声がたくさんありました。確かにそうではありますが、しかし進んでいることも多々あるんだろうと思います。この現状を、当事者としてどう思っていらっしゃるかというところからお話をいただければと思います。

■もはや金正恩氏は日本人拉致を知らないとは言えなくなった

横田拓也(横田めぐみさんの弟、家族会事務局長)

本日は3連休にも関わらずお越しいただきありがとうございます。

今、櫻井先生からお話がありました、我々がどういうふうに物事を見ているかについてお話したいと思います。色々なお立場の方から、国際政治、国際関係を見た場合に、ご意見は色々出てくると思います。しかし日本が最終的にどうしなければならないのかが大事で、物事の順番を整理すると、やはり北朝鮮にとっての優先順位は、現時点では対日本ではなく対アメリカであるということを、残念ながら認識しなければならないと思います。

この二国間の関係が進展しない限り日・朝関係で具体的な進展はまずないだろうと思います。その意味で米・朝首脳会談以降の実務者協議が具体的に進まない限りは、残念ながら具体的なニュースはないだろうと思っています。まさに米・朝がにらみ合いをしている状況だと思っています。

一方で北朝鮮は、実務者協議や今後の首脳会談を有利に運ぶために、金正恩が度重なるミサイルの発射とSLBM施設の視察等を行って北東アジアに脅威をもたらすような行為に枚挙にいとまがないのが事実で、これは日本の安全保障にとってもとても危険なことですから、日本政府そして国民世論はこれを看過することがあってはならないと思っています。

また北朝鮮の国内事情は困窮していて、アメリカは大統領選挙のタイムテーブルを考えると、楽観的かもしれませんが、年末までになんらかの動きがあるかもしれないという期待や観測を持っているので注意深く見守らなければならないと思っています。

一方、これまでの米・朝首脳会談の中で、安倍総理の声を直接トランプ(Donald John Trump)大統領から伝えていただいたことによって、金正恩キム・ジョンウン)委員長は日本人拉致問題を、もはや知らないとか、聞いていないということは通用しないということを、世界に対して大きく発信したわけですから、ここから彼は逃げられない。その意味では米・朝、そして日・朝の会談を伴って人権問題を解決しなければならないという大きな荷物を彼自身が背負ったと思っています。

また日本政府は、米・朝首脳会談の非核化協議の中で、アメリカ自身は経済支援をしないということから、日本が支援をするというロジックになっていると思いますが、その支援をすると言うロジックにおいては、日本人拉致問題、人権問題の解決なくして絶対に国交正常化を含めて行えないということは、先ほど安倍総理もおっしゃっていましたから、この人権問題が解決される、もちろん日本にとっても明るいニュースですが、彼自身、そして北朝鮮国民、北朝鮮という国が明るい未来を描くために、今、金正恩委員長が勇気ある判断をしなければならない時期にあるんだろうと思っています。

唯一心配していた点といえば、ボルトン(John Robert Bolton)大統領補佐官が退任されたことによって、これまで私たちと共にあった、活動していたキーマンでしたから退任は正直驚いた点もありますが、ボルトンさんが退任されたのは別に北朝鮮政策でトランプ大統領と対立したわけではありませんから、北朝鮮政策に関してはアメリカ政

府は一貫して筋が通っていると思いますし、現実の問題として財務省が独自の制裁を課しているわけですから、この大きな流れがずれないように日本政府がどれだけトランプ大統領に、各省庁がアメリカの政府に対してコミットしていくか、ここが大事なんだろうと私は思っています。

櫻井よしこ

幅広く総括的なお話をいただきましたが、飯塚さんはいかがですか。

■41年以上待たせるな

飯塚耕一郎(田口八重子さんの長男、家族会事務局次長)

皆さん、こんにちは。

本日は三連休の最終日にも関わらず、多数の方々にお越しいただき、ありがとうございます。

私からまず申し上げたい点は、我々の家族の根幹としてあるのは、やはり40以上の長い月日、家族が拉致をされて行方も分からないまま、ずっと苦しい思いをしてきたことです。そして私は公の場に立って15年ほどになりますが、ここ2、3年、ようやく物事自体が動きそうになっているということです。

40以上の長い月日の中でようやく日の目を見た感じがあります。一日千秋の気持ちでずっと待っていた我々家族は、今この局面で改めてどう思うかということを申しあげたいと思います。

まず基本的に北朝鮮に関しては、中国やロシアからも財産的な流入がなくなりつつあります。北朝鮮は今困窮している状況になっていると判断していますし、多くの方々からもそういうことをお聞きしています。

そしてアメリカにおいては、トランプ大統領は我々に2回お会いしていただきましたが、その中で我々家族の心情に寄り添うような形で、「君たちの気持ちは分かっている」、「シンゾーとともに解決のために協力したい」という話をいただきました。

北朝鮮を取り巻くそういう状況の中で、北朝鮮というのは年々圧力を受けている状況になっています。そして金正日キム・ジョンイル)が亡くなり、金正恩に代わって5年で北朝鮮内部の政策を変えていかなければならない中で、北朝鮮自身が変わっていかなければならない事態になっているということをご理解いただきたいと思います。

一方、日本国内においては、拉致問題が認知されない中で、横田 滋さん、早紀江さんが署名用紙を持って、まだ皆さんに理解していただいていない状況の中で、「めぐみちゃんを助けてください」ということを20年前からずっとやってこられた。

それを引き継ぐというわけではないですが、我々が今違う形で担って皆様にお話をさせていただいている状況です。その中で色々思うのは、「どうしても一刻も早く家族に会いたい」ということで、私に関しては41年の長い月日、見たことがない母親に会いたいという気持ちです。

この気持ちを今転換させて、北朝鮮に対して「早くすべての拉致被害者を返せ」、「41年以上待たせるな」、「解決することでお前たちもハッピーになるんだ」と。そういうことを皆さんが認知をして、広げていく、まさにそのタイミングではないかなと感じて思います。

櫻井よしこ

ありがとうございました。

横田さんと飯塚さんのお話を伺っていると、ご家族の皆様方が、さっき早紀江さんがおっしゃいましたが、金正恩氏に対して基本的に誠実に対応しようとしている。

どうしてこのことを考えてくださらないんですかと疑問を問いかけているわけですが、安倍総理が今まで行ってきたことは、そのように金正恩氏の考え方を、まともなというか、そういう方向に変えるためには話し合いだけではダメなのであって、やはり圧力をかけなければならないということで、その点で安倍総理はトランプさんに度々状況をお話して、対話と圧力の中の、今圧力が大事なんだということで説得したと思います。

ただ、なかなか皆さん方がおっしゃるように状況が進んでいない。先ほど日本維新の方、公明党の方が北朝鮮の経済が非常に悪いということを数字をあげてお話になりましたが、その割に7月以来10発もミサイルを発射したり、どこからあのお金が来るんだろうと思ったら、国連が大変なハッキングをして20億ドル

くらいのお金を手に入れていたとか、それから西岡さん等が調べておられますが、中国から事実上の制裁破りに近い経済協力がなされているという実態があります。

このような中で、拉致問題が遅々として進まない状況に直面させられているわけですが、ここで私はやはり日本がきちんとした態度をとらなければならないと思っているんです。そこに行く前に、西岡さんに現状をお話いただければと思います。

■最高指導者がもう1回米・朝会談を決断する機会がくる

西岡 力(救う会会長)

皆さん、今日はありがとうございます。

北朝鮮は個人独裁国家ですね。

指導者がすべての権限を持っているわけです。今までその指導者に日本のトップが会う機会が2回あったわけです。

今の指導者のおじいさんに金丸さんたちが会った。先ほども少し議論になりましたが、実は曽我さんはその時テレビで日本の政治家が来ているというのを見ていて、「日本の政治家が来ているなら自分のことが議題になっているはずだ」と日本の政治家を信じていたんです。

しかし議題にならなかった。だから何も動かなかったのです。その2年前に日本政府は国会で、拉致のことを認めていたにも関わらず金日成(キム・イルソン)には伝わらなかった。

そして息子の代になって、今度は小泉総理が拉致を議題にして話をした。しかし嘘の報告書、紙を確認しないで、「死んだ」という報告になって拉致は最優先ではなかったんだなと私たちは思いました。

おじいさんの決定と息子の決定をかえられるのは、孫の独裁者ただ一人です。

もう1回、安倍総理が会うチャンスが来るわけです。「拉致はない」と言っていたのが金日成です。「あったけど8人死んだ」と言ったのは金正日です。全員返すという決定ができる人が今トップにいて、その人と会うことができるかもしれないチャンスが近づいてきている。

しかし、そこでも嘘をつかれたらどうなるのか。1回チャンスは来ると私は言っているんです。独裁国家の中ですべての権限を持っている人に、「日本からの経済協力がほしいなら被害者を全員返しなさい」と言えるチャンスが来る。アメリカもそのことをしろと向こうに言っている。そういう枠組みができている。

しかし向こうがどう出てくるかはまだ分からない。でも北朝鮮という国は、トップに会い、トップに決断を迫るしかない。今のトップはまだ日本と一度も接触していない。これが我々が与えられている条件です。

この条件をどう最大限に活かすのか。そのために経済的圧力をかける。アメリカを中心とした軍事的圧力もかける。マクシマムプレッシャーという言葉がありました。2017年北朝鮮が合計40発の弾道ミサイルを撃ち、3回の核実験をした時、中国の習近平主席は「私は北朝鮮とコネがあるから任せてくれ。100日待ってくれ」と。トランプ大統領が任せたらまた核実験をしました。

それでやはり、「安倍晋三の言うことが正しい。マクシマムプレッシャーだ」と言って厳しい制裁がかかった。今国連の制裁の結果、北朝鮮の貿易輸出の9割がカットされました。北朝鮮は2016年に28億ドル輸出していたんですが、今は3億ドルです。25億ドルの外貨が毎年無くなっていくんです。

中国が、水産物買ってはいけないとなっているから、近海にイカ釣り船を入れてお金を送ったり、観光客を入れたりしていますが、経済が復興するところまではいっていないのが事実です。一息はつかせているかもしれませんが。

そのことも制裁違反と厳しく言わなければいけませんが、圧力をかけたら話し合いが始まった。そのマクシマムプレッシャーをやったのはボルトンさんではないんです。ボルトンさんは2018年に就任したのですが、その前2017年にマクシマムプレッシャーがかかっていた。

ボルトンさんには私たちは何回も会ってきましたからがっかりはしましたが、枠組みは崩れていない。最高指導者がもう1回決断する機会がくるだろうというのが今の私の現状分析です。

櫻井よしこ

ありがとうございました。

現状分析を見ると、北朝鮮はかなり追い詰められているわけです。だからこそもっと追い詰めていかなければならない。追い詰めていって、金正恩が本当に心を開いて、自分自身が生き残るためにはどうしたらいいかという正念場を迎えて、決断しなければならなくなるというのが、横田さん、飯塚さんがおっしゃったことです。

今まで日本政府は国連制裁決議を主導し、最強のアメリカという国の大統領を納得させ、今の状況を作ってきたわけですが、ここで足踏みをしているように見えると私は言いましたが、ここからさらに進んでいくにはどうしたらいいか。

例えば、ボルトンさんは2018年の春に就任し、マクシマムプレッシャーはその前に確立されていたとはいえ、ボルトンさんという人はすごく原理原則にこだわる人です。またトランプ大統領に原理原則にこだわらせようと一生懸命宥める方です。

このボルトンさんがいなくなったということが、トランプ外交に少なからぬ景況を及ぼすのではないかという見方があります。私たちはもちろんアメリカ外交の専門家ではありませんが、トランプさんの外交を見ていて、懸念があるかどうかお聞きしたいと思います。

■大統領にぶれはないと信じるが前のめりの交渉にはならないように

横田拓也

ボルトンさんとは2003年以降、何度かお会いさせていただいていますし、この前大統領が来日された時にも迎賓館でお会いさせていただいて、私からも「強いご協力ありがとうございました」と直接お伝えしました。

ホワイトハウスの中でのボルトンさんの立場、機能として、大統領が一足飛びにやろうとすることに対するブレーキ役の機能は少なからずあったと思いますから、北朝鮮政策においても何らかのストッパー的な役割、もしくはハードライナー的な声を発することによって北朝鮮を対話に持ってくるような機能があったかもしれません。

内政干渉ではないということをお断りした上で言うと、トランプ大統領とは若干肌が合わなかったのかもしれませんが、退かれて、それが若干今後の北朝鮮政策に、確率は低いかもしれませんが、前のめりの交渉にならなければいいなという心配はあります。

ただ、先ほど言ったように、それ以外の方、もしくはトランプ大統領ご自身が、国連総会での演説の中や来日された時の我々との面会の際には、「絶対にお姉さんに会えるよ」と声掛けをしてくださっています。ご本人の人間としての強みがあると私たちは感じていますから、大きなぶれはないと信じているんですが、それを遠くから見ているだけでは人間は心が変わってしまう可能性がありますので、そこは外交機能を持つ日本政府がどれだけそこに加担していくのかということが、責任として大事なのではないかと私は思っています。

櫻井よしこ

飯塚さん、いかがですか。

■「全被害者の即時一括帰国」という大前提からぶれないこと

飯塚耕一郎

ボルトン氏がいなくなったことに関して、アメリカの体制への影響がどうかは私には判断できませんが、一般的にも言われるように今後米・朝首脳会談以降、核・ミサイル問題について解決、進展がある程度見受けられた場合に、日・朝にシフトしていく形になると思いますが、その時個人的に大切だなと思うことは、日本もしくは日本政府の不変的な姿勢が重要になると思います。

私は15年ほど皆様の前でお話をさせていただいていますが、同じことを言い続けることは結構重要だなと思っています。我々話す側の立場からすると、伝わっているかどうか分からないということで、言い方を変えることもするんですが、そうしてしまうと発言者が大事に思っていることが変わってきているなと思われることがままあります。

我々の発言、安倍総理の発言、日本政府の発言を受けて、北朝鮮も微妙に反応を変えてきたりすることが実態としてあると思います。だから我々は不変的な姿勢、「全被害者の即時一括帰国」という大前提は全く変えずに、繰り返し言い続けることが重要だなと思います。

核・ミサイルがどうあれ、拉致問題については日本がぶれない姿勢を続け、一歩たりとも譲らないんだということ、すべての被害者が帰らない限りは、経済的支援も含めて北朝鮮に甘い汁は吸わせないというスタンスが必要だと思っています。

改めて言いますが、「全被害者の即時一括帰国」ということは我々家族会が掲げていることで、かつて交流した時アーミテージ(Richard Lee Armitage)さん(元米国務副長官)がおっしゃっていましたが、「拉致問題の解決は君たち家族が決めるものだ」と。そしてその家族が掲げているのが「全被害者の即時一括帰国」だということを改めてご理解いただければと思います。

櫻井よしこ

西岡さん、トランプ大統領の言葉だけを追っていくと、時々分からなくな

ります。私たちの共通の友人であるジマーワさんという方が、「大事なことはトランプ大統領さんのツイートとか言葉ではなくて、彼の行動をよく見た方がいい」と言ったことがあります。

その意味ではアメリカの北朝鮮に対する制裁のあり方は全然変わっていない。

私たちが日本は何をすべきか、日本は何ができるかを論ずる前に、アメリカのことを論ずるのは国家として頼りないというか、寂しいばかりですが、日本のやるべきことを論じる前に今のトランプ政権の状況をどう見るかということについて、いかがですか。

北朝鮮アメリカが地下濃縮ウラン工場をいくつ知っているかを調査中

西岡 力

トランプ大統領が今一番考えているのは次の大統領選挙で再選されることだと思います。ボルトン氏が解任された後の『ニューヨーク・タイムズ』を見ると、これは激しく反トランプですが、ボルトン氏の功績として「ハノイでの2回目の米・朝首脳会談を決裂させたことだ」と書いています。

トランプさんが安易に譲歩しなかったハノイでの会談については、民主党共和党も意見の違いはない。両党とも、トランプさんが安易に譲歩してしまうのではないかと心配していた。『ニューヨーク・タイムズ』はボルトン氏が大嫌いなのですが、ボルトン氏がそれを押さえたのは功績だ、と言った。

アメリカはこれまで何回もだまされてきていますので、北朝鮮がきちんとした行動を示さないのに、譲歩はできない。アメリカの国益から言うと核開発をまずストップするということです。

ハノイでは北朝鮮寧辺だけをストップすると、それがあたかも恩恵のように言った。しかし寧辺以外に地下で濃縮ウラニウムを作っている施設がたくさんあるんです。作り続けていながら「制裁を解除してくれ」と言った。

それに対してトランプさんが乗ってしまったらアメリカ中が批判するという枠組みができている。北朝鮮もそれは分かったでしょうから、次に出してくるカードとして、地下の濃縮ウラニウムについてアメリカはどこまで知っているのか。

知っている所は出さざるを得ないだろうなということを、アメリカがどこまで知っているかを必死で調べて、出すカードを考えようとしていると思います。

そのことは実は、安倍さんが金正恩と会った場合にも同じようなことが起きるのではないかと思っていますが、それは後で話します。

■全被害者の一括帰国のために何をしたらいいか

櫻井よしこ

ありがとうございました。ここでとっても大事なことは、北朝鮮と相対峙して拉致被害者を取り返すことが日本単独ではできないことです。これは如何なる国もできない大変大きな課題であろうと思います。

日本にとって非常に大事なことは、日・米の協力関係をしっかり固めることです。

その後ろに国際社会の支持をがっちりと取り付けることだろうと思います。その意味でアメリカが、今西岡さんがおっしゃったように、『ニューヨーク・タイムズ』でさえも、あのハノイ金正恩と決裂したことを、「トランプはよくやった」と褒めていることです。ここはアメリカの指導者たちの良識を信じていいのではないかと思います。

同じように中国に対する対策も民主、共和両党が非常に厳しいことを考えています。その意味で大国アメリカの大きな流れとしては、正しい方向に行っていると思います。

ただ、「神は細部に宿る」んですね。小さなことに私たちは気をつけなければならないわけで、小さなことというのは何か、アメリカの信頼をわが国が繋ぎ留めなければいけない。何でもかんでもアメリカにおんぶにだっこでお願いするような国であってはならないわけで、アメリカとの信頼を勝ち得てどうしても日本のために、日本の拉致被害者のために、横田さんのために、有本さんのために、みんなのために、アメリカの大統領が一肌脱ごうということを、気持ちの中に定着させるには、私たち自身が私たちの力と意思でこの拉致問題を解決していくんだということを見せていかなければいけないわけです。

それをどうやって見せていくかということを、これからの時間でお話していただきたいと思います。横田さんも、飯塚さんも、若い時からお姉さん、お母さんのことを思って街頭に立つなど活動をしてきました。

最初は難しいこともたくさんあったと思うんですが、国内への運動から海外への運動に舞台を広げて、感じることがあったと思います。そうした体験を通じて、これからの日本が特定失踪者の皆さんも含めて日本から連れていかれた人をとにかく一括して取り戻す、それを実現するにはこれから何を考え、何をしたらいいと感じていらっしゃいますか。

■一人ひとりの方に目を合わせて話すこと、そしてアメリカなどに人脈を広げる

横田拓也

先ほど黒岩知事から「小川宏モーニングショー」の話が紹介されましたが、私が小さい頃の記憶が今も残っていて、番組に出る前の日に品川のホテルに泊まった時、家族4人で窓から下を眺めました。山手線や京浜東北線の緑、青の車両が走っていて、「東京にいるんだね」ということを話したことがあります。

その記憶は私個人の記憶かもしれませんが、テレビの番組に出ることによってカメラがすごく怖くなってしまいました。

また姉がいなくなった直後に、警察の方が逆探知装置を着けて、刑事の方が居間に10人以上いましたが、そのことがあって、電話の音が今でもあまり好きではなく、それはもしかして心の傷かもしれません。しかし、母が今の私よりもっと若い頃に「自分の娘を助けてほしい、誰か情報をください」と叫んでいたのを

今でも覚えています。

私たちが学校に行っている時に、「畳をかきむしって泣いていた」という話を先日櫻井先生と母が対談した時に、その話を横で聞いていた時に初めて知りましたが、私はなにができるんだろうと思う一方で、何か怖いという思いがあったのですが、2003年に家族会・救う会・議連で訪米してから、今でもそうですが「一人ひとりの方に目を合わせて話すこと」です。

私たちには外交権も警察権もなく武力行使もできない。家族を取り戻すには、一人ひとりに直接会って、悔しい気持ちを真剣に伝えることによって、皆様の心を動かすことしかできない。そして皆様がもう一人の方に伝えていただいて、民意、強い民主主義を伝えていただくことしかできない。

その意味では今回、トランプ政権は若干メンバーが変わっていくんでしょう。

そして先ほど申し上げましたように、日本政府がまずコミュニケーションを取る必要がありますが、今後はタイミングを見計らって家族会、救う会、議連が一緒になって人脈を作るとともに、私たちの意見を改めて深く打っていくために活動していかなければなならいと思っています。

櫻井よしこ

ありがとうございました。飯塚さんは本当に小さい時にお母様を連れて行かれて、お母様のことを全く知らずに育って、ある年齢に達した時に、(お母さんの兄で育ての父の)お父さんから実態を知らされた。そしてその後若い身で、訴えられてきました。

アメリカにも行かれたし、国連にも行かれ、色々な体験をされましたが、今私たちが何をしたらいいと思いますか。

■国内、海外への周知活動、そして金正恩への啓発

飯塚耕一郎

日本は軍事国家ではありませんので、世論を使って被害者をどうやって帰国させるかに尽きると思います。その意味で我々がやらなければならないことは、この事件の悲惨さを伝えた上で皆さんに理解していただき、かの国から被害者を絶対に返させる。それについて理解をしていただくことが一番重要だと思います。

そういう中でこの大集会には毎年皆さんがいっぱい来てくださいますが、正直に申し上げると、まだ若い方々の理解が得られていないのかなと思っています。

10代、20代、30代、40代の方々への啓発を、ここにいる国会議員の方々も含めてですが、色々な形でっぱい来てくださいますが、正直に申し上げると、まだ若い方々の理解が得られていないのかなと思っています。10代、20代、30代、40代の方々への啓発を、ここにいる国会議員の方々も含めてですが、色々な形で衆知していくことが必要かなと思います。周知していくことが必要かなと思います。

2点目に、海外においてもこの問題はなかなかご理解いただけない部分が多くあります。ここ数年拓也さんと二人でニューヨーク、ベルギー、ジュネーブなどに訪問させていただきました。

すごく印象に残っているのは、ニューヨークのペルー総領事館だったと思いますが、そこの大使の方に、こういう事件があって我々は家族を北朝鮮から取り戻したいとお話したところ、すごく感銘していただいて、その方が肌身離さず持っているお守りのイコンを渡していただいて、「これはもう僕には要らないから君たちが肉親が帰るまでこれを持っていなさい」と言ってくださいました。

そういう形ですごくご理解をいただいた時もありましたが、まだまだ世界において北朝鮮の人権問題が理解されていない部分があることを改めて感じました。

そういうことで海外の方々にも周知したいなと思っています。

最後に、この問題の解決のキーパーソンは金正恩以外にいませんので、彼がこの問題を解決することに寄ってメリット、恩恵を受ける。だから解決した方がいい、中途半端な解決ではなく全面解決がいいということを彼に理解させることです。会場の皆さんや日本全国の方々に「即時一括帰国させよ」ということを常に

掲げて、金正恩自身に突き付けていきたいなと思っています。

櫻井よしこ

独裁者の気持ちをどういうふうに変えていくかという問題は非常に難しい

問いかけです。生半可なことでは独裁者は気持ちを変えません。変えるには、自分の身が危ない、絶体絶命であるというところを理解させるような状況を作っていかなければなりません。

それには経済的な手段、軍事的な手段、それを合わせた国際政治の手段があるわけですが、わが国にはご承知のように限界があります。その中で西岡さん、あなたほど今の日・朝のこと、拉致のことを知っている方はいないと思いますが、今の日本国民と日本政府がどのように考えるべきか、そして何をしたらいいのか、どういった行動の余地が我々に残されているのかをお話ください。

■「拉致問題の解決が必要」とだけ言う人は信用できない、解決の定義が問題

西岡 力

私は先ほど、「1回勝負の時がくる」と言いました。金正恩氏がこの問題について決断をする時がくるだろうということです。そこで勝てなければ、あと10年とか、もっとかかるかもしれない。しかし、そこまで持ってくることができたことも確かです。

北朝鮮の内部からの情報によると、彼らは「日本は独自外交はできない。アメリカの言うことを聞く。小泉訪朝は失敗だった。総理にサインをさせたにも関わらず、そして被害者を5人も帰したにも関わらず経済協力を取れなかった。アメリカが反対したからだ」と。

北朝鮮はなかなか世論というものを理解できないのでそういう総括になっているようです。「だからまずアメリカと話をする」と。しかしトランプ大統領は、「豊かな未来が待っている」と動画まで作って金正恩氏に見せましたが、「俺は金は出さない」と繰り返し言っています。

安倍総理は、「韓国にやったことと同じことについては、日本がやるべき交際法上の責任があるのでそれをします」と言っている。しかしそれは、核・ミサイルはもちろん、拉致問題が全面解決した後やると言っている。

またトランプ大統領が拉致のことに言及したのは、もちろん人間対人間の心が動かされたこともありますが、「豊かな国になれるんだぞ。金はシンゾー・アベが出すと言っている。しかしシンゾーは拉致が絶対だぞと言っている」と。

そういう枠組みができた。これは我々にとって悪いことではない。その枠組みを作ることができた。これを資産としてどう活用するのかということです。

実は今日のニュースを見ると、先ほど90年の金丸訪朝の話が出ましたが、その金丸さんの息子さんが訪朝したというものでした。何と北朝鮮が、金丸信生誕105年のお祝いをしてくれた。日本でそういうお祝いが山梨であるのかどうか分かりませんが、それはつまり、北朝鮮にとって金丸さんが約束したことは大変有利だったということです。

梶山答弁があったのに拉致を出さないで、戦前のつぐないだけではなく戦後の償いもすると言った。そこをベースにして日本と交渉しようとしている。少なくとも金丸訪朝をアレンジした統一戦線部は今でも考えています。だからこそ金丸さんの息子さんを呼んだのです。

そしてその統一戦線部が考えていることは例えば、米・朝が動き始めた。米・朝首脳会談が決まったら突然、休眠状態だった日朝国交促進議員連盟が活動を開始して、国会議員会館の中で約60人の国会議員を相手に勉強会をやった。

その講師は、統一戦線部の指導を受けている朝鮮総連の新聞の平壌支局長を国会議員会館に呼んで与野党の先生方が話を聞いた。与党の先生もいました。これは事実です。何かをしようとする時は、工作を先にやるんです。今回金丸さんの息子さんを呼んで105周年をやったことは、その一環なのかどうか。

北朝鮮は多分9月末から米・朝実務協議をするという方向です。トランプ大統領も年内に金正恩ともう1回会いたい意向です。

そこで核について彼らがどこまでカードを切ってくるかは分かりませんが、彼らからするとトランプ大統領が一定の範囲でだませたり、あるいは話し合いが通じれば日・朝に行く。しかし、古屋先生たちではなく、もう一つの議員連盟と一緒にやろうとする準備を、少なくとも統一戦線部はしているのは間違いない。彼らはそれが仕事だから。

だから今の段階で私たちが気をつけなければならないのは、「拉致問題の解決が必要だ」とだけ言う人は信用できないということです。みんな解決と言います。だから私たちがここで、皆さんとともに繰り返し叫び続けた解決の定義が問題です。「全被害者の即時一括帰国」でなければならない。

その国交促進議員連盟の中では、「国交正常化交渉と拉致被害者の調査を並行してやりましょう。そのために日・朝合同調査委員会を作りましょう。調査が長引くから平壌と東京に事務所を作りましょう」という話が出ている。

なぜ調査が長引くんですか。独裁者は全部知っているんですよ。曽我ひとみさんもいらっしゃいますが、拉致被害者も1週間に1回の生活総和をやっているんです。北朝鮮の人は全員、1週間に1回思想点検をするんです。その報告書は全部党の組織部に上がっています。被害者全員のファイルがあるんです。誰がどこにいるか分からないなんて嘘です。それなのに調査に長くかかる。笑わせるんじゃないということです。

しかし、そういうことをやろうという人が、小泉訪朝の時外務省の幹部だった人がテレビに出てきて、そんなことを繰り返し言っている。有名な国際政治学者がそういうことを言い始めた。そういうことがシンガポール会談の直前から直後にかけて起きたんです。

アメリカが安易な譲歩をしなかったからそれは止まりましたが、アメリカが動き始めたら、それがまた動き始めるに違いないと私は思っています。だからこそ、「拉致問題の解決が必要だ」とだけ言う人は信用できない。「解決って何ですか?」と聞かなくてはならない。「全被害者の即時一括帰国」で、今日特に強調したいのは一括です。

彼らが狙っているのは何人かだけ返して、あとは調査をしましょうということです。それはもうダメだ。先ほどまでの話を私は注意深く聞いていたのですが、菅官房長官は「一括」とおっしゃいました。古屋圭司先生たちが自民党本部からそれを言い続けてくださっていたんですが、官房長官がここで、「日本政府の目標は拉致被害者の一括帰国だ」とおっしゃいました。その意味はすごく大きいと思っています。

「一括帰国」というラインから政府が絶対折れないように、そして「拉致問題の解決」という人たちは信用できない。そうではなく、「全被害者の即時一括帰国」というかどうかです。そこを見分けないと、これから最後の戦いになってくると、様々なけたぐりや工作等色々なことが起きてきます。彼らはなるべく、小さな物で大きな物を取ろうということで、そのために給料をもらって仕事をしているのが宋日昊ソン・イルホ)等の人たちで。

私は宋日昊と大喧嘩したことがありますが、そういうことが起きるだろうと思います。しかし、それを乗り越えないと頂上には行けない。しかし、ここまではきた。最後の戦いが待っている。金正恩自身が、「統一戦線部のやり方では日本はだませない」と思って、別のやり方でやれと言うかどうか。

統一戦線部は変わらないと思いますが、そのためには私たちも統一戦線部に負けない知恵と勇気と団結の力が今必要だと強く思っています。

■外交、交渉の背景には強さがないとダメ

櫻井よしこ

どうもありがとうございました。

今の横田さん、飯塚さん、そして西岡さんのお話で、私たちが何を考えるべきか、何をすべきか、何に対して警戒心を持つべきかが明らかになったと思います。

二度とだまされてはならないのです。だますのが得意なのが北朝鮮のリーダーでしたが、今回はへたをすると、彼自身の存続にも関わってくるような、非常に切羽詰まった状況ができています。

だけどもここで日本とアメリカがしっかりと手をつないで、国際社会を味方につけて、今皆さんがおっしゃったような心構えでいかなければ、この1回きりのチャンスを逃してしまうかもしれない。まさに勝負をかける時だと思います。

そのために是非、皆さん方の拉致に対する関心、そしてとにかく安倍政権のもとでこの拉致問題を解決するんだという意味での一致団結、そして安易な妥協は絶対にしないという固い決意、これを私たち国民が一生懸命言い立てれば、政権に対する後押しにもなりますし、北朝鮮に対する圧力にもなっていくだろうと思います。

そして早紀江さんがおっしゃったように、拉致問題を解決することで、本当の意味での国家になっていかないといけないんですよ。どうして国民を救うことができないのか。40年も、それ以上も、どうして手も足も出せないのか。これは国ではないからですね。

国ではないということは、確かに私たちは真面目な誠実な人々によって成り立つ日本国ですから、一生懸命に仕事をして、一生懸命に経済発展をして、一生懸命にいいことをしようと国際社会のためにも貢献してきましたが、ふっと振り返ってみると、世界が大きく変わる中で、そして北東アジアも大きく変わる中で、いいも悪いも含めて、拉致解決のたった一つのチャンスが目の前に来ている時に、経済しか使えない、その他の手段は国家として使えない。

戦争をしたいと言っているのではありません。外交、交渉の背景には強さがないとダメなんです。その強さというのは、経済でもあり、軍事力でもあります。

何としても、我々の国が国民を守るんだという気概でもあると思います。これから2年間安倍政権が続く中で、何としてでもこの拉致問題を解決していかなければならないわけですが、安倍さんだけにお任せするのではなく、私たちも戦力なんだという気持ちで、一生懸命この問題に取組んでいきたいと思います。

今日は本当にありがとうございました。

多少の意見の違いは、大きな問題の前では、とんと乗り越えて一緒にやっていきましょう。ありがとうございました。